
おうちにはすぐに帰れますが、学校の教室に戻るには少し準備が必要です。
子どもが安心して学校に戻れるように、
医師と公認心理師やコメディカルが一緒に準備を手伝います。
子どもたちは学校に戻るとき、いろいろと楽しみにしていることがあります。



しかし、長く学校を休んでいたり、体調や学習面で不安があったりすると、せっかく楽しみにしていたことも十分に満喫できないことがあります。
太郎くんが1歳のとき、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)と診断され、長い入院生活を送りました。退院後は、幼稚園と児童発達支援センターを併用しました。児童発達支援センターとは、各自治体にある、子どもの身体や言葉などの発達を促すプログラムを提供する施設です。
治療から5年が経ち、小学生になった太郎くんは、元気に友だちと一緒に学校生活を楽しんでいます。本人と親に、学校生活がうまくいった秘訣を聞いてみました。
太郎くんのお話は、準備と支援によって、学校生活がより安心して 楽しめるものになることを教えてくれます。
認知機能検査は、子どもが学校で安心して元気に過ごすための準備です。検査を受けることで、つまずきや困りごとの原因がわかり、その対処を一緒に考えることができます。検査の結果は、学校での支援計画を立てるための大切な手がかりになります。
| 検査でわかること | |
|---|---|
| 得意なこと | 学習や注意、記憶などで自分の得意なことがわかると、授業だけでなく、係や委員会の活動など学校生活のいろいろな場面で活かすことができます。自信をつけていく土台になります。 |
| 工夫が必要なこと | 苦手なことを無理に克服するのではなく、得意なことを活かして補う方法を考え、学校生活で工夫できるようになります。こうした工夫は、将来、働くときに役立ちます。 |
| 必要なサポート | 学校に相談して、授業や友達との活動をより楽しめるように、支援の方法や方針を一緒に考えることができます。 |
認知機能検査は医師からすすめられることもありますが、本人が希望すれば、入院中でも外来でも受けることができます。タイミングとしては、治療が一区切りついた時期や、学校に戻る直前がおすすめです。検査の前日は十分に睡眠をとりましょう。そして、次の3つをご持参ください。
「何を得意としているか」「どの部分で工夫が必要か」を理解することで、 学校に何をお願いしたらよいかがわかりやすくなります。
認知機能検査や日常生活の様子から、子どもに合った学びかたやサポートを組み立てます。検査結果や聞き取りをもとに、どのような支援や教育の進めかたがその子に合っているのかを整理し、無理のない学校生活につなげていくことが大切です。
復学支援では、新たに学校に入学するお子さんや、もといた学校に戻るお子さん、教育支援を受けたいお子さんなどをサポートします。具体的には、認知機能検査により困難の原因と対策を特定し、復学支援会議などで学校に支援を一緒にお願いします。


・適切なサポートのステップ
MEET YOUR SUPPORT(PDF)

日常生活の聞き取りと、認知機能検査の結果をもとに支援の方法や教育コースを決めることができます。
| 教育の種類 | 教室 | ||
|---|---|---|---|
| 部分支援 | 通級指導教室 | 通常学級 | 普段は通常学級で、必要な時だけ支援学級 |
| 取り出し教育 | 通常学級から一時的に離れて別室支援 | ||
| 全体支援 | 特別支援学級 | 特別支援学級 | |
| 特別支援学校 | 特別支援学校 | ||
特別支援教育でできることが増え、もといた教室に戻りたいと思った場合は、新年度に通常学級へ戻ることもできます。学級を変更したからといって、元に戻れなくなることはありません。
また、通常学級での勉強が難しく、特別支援学級に変更したことで、授業についていけるようになり、前向きに通学できるようになったお子さんもいます。
子どもに合わせて環境を選ぶことが、自信を保ちながら力を伸ばすことにつながります。
支援の方向性が見えてきたら、学校の先生に教育計画書の作成や合理的配慮の相談をしましょう。先生と情報を共有することで、子どもが安心して学べる環境を整えることができます。
学校では、支援を行うために2つの計画書を作成します。作成してもらったら、外来にも共有しておくことをおすすめします。
| 名称 | 目的 | 内容 |
|---|---|---|
| 教育支援計画書 | 全体方針 | 家庭、学校、病院が連携して支援の方向性を決める計画書 |
| 個別の指導計画書 | 具体的手順 | 具体的な指導方法や配慮を示す計画書 |
これらの書類は、長期フォローアップや進級、進学時にも役立つ大切な資料です。成績表や認知機能の検査結果とあわせて、一つのファイルにまとめて保管していきましょう。
合理的配慮とは、本人や親からの申し出に基づき、学校が無理のない範囲で行う対応のことです。教育における合理的配慮は、障害者差別解消法により法律で定められています。
現在は国公立と私立を問わず、すべての学校で合理的配慮の提供が法的義務となっています。
参考資料:文部科学省 合理的配慮について
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1297380.htm
合理的配慮は、本人や親が「困っていること」「配慮してほしいこと」を伝えることから始まります。復学支援会議や保護者面談などの場をお願いし、具体的に話し合うことが大切です。
「MEET YOUR SUPPORT 学校でいきいきと過ごすために」のリーフレットを渡して、困難は晩期合併症に起因することを伝えましょう。
同じ障害や困難があっても、必要な配慮は子どもによって異なります。「前例がない」ことより「その子にとって必要かどうか」が優先されます。
医師の意見書や公認心理師の検査所見など、客観的な資料を示すと話し合いが進みやすくなります。
合理的配慮は、学校の人員、費用、設備、安全面を踏まえ、現実的にできる方法を一緒に考えるものです。全面的に難しくても、一部の調整や代替案が可能な場合もあります。
「できない」で終わらせず、「では何なら可能か?」を学校と一緒に探りましょう。
おわりに
親が子どもの学校生活について迷ったり悩んだりするのは、ごく自然なことです。
LCHなどの小児がんの治療は、学習や考えかたに影響することがあり、子どもの努力不足や親の育てかたの問題ではありません。
すでに学校に復帰している場合や、これまで支援計画書を作ってもらったことがない場合でも、困っていることがあれば、支援を求めるのに遅すぎることはありません。
子どもの特性を把握し、必要な支援を少しずつ整えることで、 子どもは自信を取り戻し、いきいきと学校生活を送ることができます。
「このままでいいのかな」と感じたときが、支援を考えるタイミングです。
迷ったら一人で抱え込まず、ぜひ担当の医師に、 「このHPを見たので相談したい」と伝えてみてください。