組織球症に続発する中枢神経変性症は、典型例ではLCHの診断・治療後、脳MRIの異常が先行し、病初期には神経症状はみられない。このような「症状はないがMRI画像上の信号変化のみが捉えられる時期」を経て、数年かけて脳MRI異常が進行すると、次第に神経症状が明らかとなる。
小脳歯状核を中心とした異常を反映して、主には小脳性運動失調症による症状をきたす。すなわち、失調性歩行、協調運動障害、測定障害、筋緊張の低下、振戦、眼振や眼位のずれなど眼球運動異常、構音障害、嚥下機能の低下などがみられる。
小脳性運動失調が中等度以上ある患者では、錐体路兆候を伴う痙性麻痺がみられることがある。限局性学習症(学習障害)や性格変化、情動の不安定、認知機能の障害など、さまざまな程度の高次脳機能障害を認めることもある。
小児期に病態が発症した場合には、知的発達症(知的障害)、限局性学習症(学習障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症などの神経発達症を生じうる。
一方、神経症状の発症が思春期以降の場合は、認知機能の障害、短期記憶の障害、情動失禁および性格変化などの症状が知られている1)。
組織球症に続発する中枢神経変性症の進行の速度や重症度には、症例毎に大きな幅がある。神経症状発症から数年以内に自由な歩行が困難となり、学習にも影響が出る症例がいる一方で、10年以上ほぼ無症状、あるいは症状が固定しそれ以上進行しない症例も経験される2)。
経過中にLCHが再発する場合もあり、MRI画像評価とあわせ、長期に症状経過を見守る必要がある。