LCH-NDの神経症状に特化した、確立された評価指標はない。それぞれの神経症状に対応して、以下の評価を行う。
全般的な障害度の評価として、EDSS(総合障害度評価尺度)1)、フレイルの評価としてTUG(Timed up and go test)2,3)を使用する。
眼球運動、構音、上肢、体幹、下肢について、小脳性運動失調の有無を評価し、記載する。定量的な評価尺度として、SARA(Short ataxia rating scale)4-6)を使用する。
LCH-NDの重症例では、知的発達症(知的障害)や高次脳機能障害により、運動失調の指示動作を行うことが困難な場合や、痙性麻痺により体幹や下肢の小脳性運動失調の評価が困難な場合がある。このような場合は、SARAによる定量的な評価が限定的になることに注意し、臨床症状を具体的に詳細に記載する。
痙性麻痺の評価として、徒手筋力テスト、深部腱反射の亢進の有無、足間代の有無、足底反応を含む錐体路兆候の有無を記載する。
なお、LCH-NDの痙性麻痺においては、頭部および脊髄MRIの信号異常や萎縮の程度と痙性麻痺の程度は必ずしも一致しない。MRIで小脳深部核に限局した信号変化のみで、延髄や大脳に目立った信号異常がない患者でも、痙性麻痺を認めることはある。
知的発達症の有無の評価としてWISC-V(Wechsler Intelligence Scale for Children - Fifth Edition)もしくはWAIS-IV(Wechsler Adult Intelligence Scale – Fourth Edition)を行う。限局性学習症、自閉スペクトラム症および注意欠如・多動症はそれぞれの診断基準に基づいて診断する。次項(10.認知機能評価方法)も参照。
その他の神経症状として、錐体外路症状(舞踏、ジストニア、パーキンソン症状)、末梢神経障害、ミオクローヌス、てんかん発作、嚥下障害、線維束攣縮、筋萎縮などがある場合は、LCH-ND以外の脊髄小脳変性症との鑑別診断に寄与することがあるため、症状を記載する。なお、LCH-NDの患者の多くはLCHに対するビンカアルカロイド系抗がん剤投与歴があるため、薬剤性末梢神経障害は併存しうることに留意する。